
よく次のような質問を受けることがあります。
「緊張して手が震えたりうまくできない時があるのですが、他のみんなはどうして大丈夫なんでしょうか?」
私がこの手の「緊張」に対する質問に答える時は、必ず”プロアスリート”の話を例えに挙げます。
そこで今回は、私が普段皆さんに教えている「緊張感から解放される方法」と、その仕組みについてご紹介したいと思います。
プロアスリートたちは緊張しない?

つい先日も、東京オリンピック・パラリンピック2021が無事閉幕し、まだまだ興奮冷めやらぬ中で、今頃競技を終えたアスリートたちもほっと一息胸をなでおろしていることでしょう。
そんなアスリートたちは、4年にたった一度しかない大会に向けて苦しい練習を耐え抜き、いざ本番においてはその一瞬一秒のために全力を注ぐ雄姿を私たちに見せてくれます。
しかし、そのような選手たちでも世界の大舞台であるオリンピックに出場して緊張しないなんてことはほとんどないでしょう。
出場するアスリートたちは一様に緊張を胸に抱きながらも、決して臆することなく、100%以上の力を出し切っているように見えます。
では、なぜ彼らは緊張しながらもあのようなパフォーマンス(実力)を引き出すことができているのでしょうか?
その答えは「緊張することをポジティブに捉えている」という点にあるのだと私はは考えています。
緊張の捉え方

緊張すると体がこわばって、自分の思うようにしゃべれなかったり、身体が動かなかったりするものです。
実際、多くの方がそうした経験をお持ちでしょう。
今は”プロ”と呼ばれるアスリートたちでさえ、発展途上の時代においては、そうした緊張感に悩まされ、苦い経験をされてきたはずです。
しかし、修練を積んで実力を伸ばし、大会で勝ったり、自己記録を更新していくうちに培われていく「自信」の積み重ねによって、いつしか緊張することによる萎縮やこわばりなどは自然となくなっていきます。
むしろ、緊張することで己の精神を昂らせ、実力以上の力を本番で発揮させる人も出てくるほどです。
これは、彼らが緊張をネガティブではなく、ポジティブな方向に捉え、プラスの力へと変換している証拠に他なりません。
無意識下の変化

そもそも、緊張して身体がこわばる原因は「失敗したらどうしよう」や、「周囲と比べて劣っていたら嫌だ」などのネガティブな感情がそうさせています。
アスリートたちの中には「自分は全く緊張しません(感じていない)」と言う方もいるように、彼らはネガティブな感情をほとんど感じていないように思えてなりません。
もちろん「慣れ」というものも考えられますが、彼らは自分が失敗する姿などみじんも考えず、「自分の勝利する姿」のみを想像して試合に臨んでいるのでしょう。
これは、今までにこなしてきた膨大な練習の量や、出してきた結果などが自信(自己肯定感)へと昇華し、「負ける」などといったネガティブな妄想を完全にかき消してしまった結果なのだと思います。
このように無意識のうちに自分のこころを大きく変化させ、その自信に裏打ちされたように結果を出し続けていった人たちが「プロアスリート」と呼ばれているのです。
緊張感から解放される方法

ここまで説明してきたことは、あくまでプロアスリートたちが「無意識レベル」の変化を起こして緊張感の解放へと至る仕組みについてでした。
実は緊張感から解放されるもう一つの方法として、これを「意識して行う」こともできるのです。
皆さんは「マインドフルネストレーニング」というものを聞いたことがあるでしょうか?
これは一部のプロアスリートたち(テニス世界ランカーのノバク・ジョコビッチなどが有名)も取り入れている”こころ”を鍛えるトレーニング方法です。
鍛えると言っても激しいトレーニングが必要というわけではなく、マインドフルネスではどちらかと言うと静かな「瞑想」のようなトレーニングを行います。
そうすることで、自分のこころを意識して上手に調節(コントロール)することができるようになるのです。
これによって意図して緊張感から解放されたり、緊張感をうまく利用したりすることができるようになります。
マインドフルネスはスポーツ以外でも、日常生活の様々なシーンにおいて役に立つことが証明されており、今や企業などでも社員に取り入れているほどです。
ちなみに私たちの施設では、専門家によるマインドフルネストレーニングを取り入れており、利用者の皆さんには希望者に対してトレーニングを行っています。
マインドフルネスについては、またの機会にでも詳しくご紹介できればと思います。
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